葉隠に「TO-DOシート」が記載されていたとは・・・
葉隠。聞いたこともあるだろうが、この江戸時代当時の本を読むのは面倒だ。だったら、現代における解説もついた本を読めばいいわけで、ちょっと選んでみたのが三島由紀夫の「葉隠入門」だ。文庫本なので、面倒で読むのを途中でやめてもさほどいたくはない。
昔の文書に加え、三島由紀夫による翻訳と解説が入っていてこれが読みやすい。と、そのとき発見した。葉隠にも、今日の「TO-DOシート」の考え方が紹介されているではないか。ボクも超整理手帳用リフィルとして「TO-DOシート」を作成しているが、まさか江戸時代中期に書かれたらしい葉隠にTO-DOシートの考え方が書かれいるとは……。まさに驚きだ。
まずは三島由紀夫の現代語訳をみてみよう。
翌日のことは、いつも前の晩から考えて書き付けておくがよい。これも、万事人に先んじて予定を立てておくべき心得である。
これは、現代でならTO-DOシートだ。江戸時代の古文には何と書いてあるか。
翌日の事は、前晩(ぜんばん)よりそれぞれ案じ、書きつけ置かれ候。これも諸事人より先にはかるべき心得なり。
まったく今日のTO-DOシートの原点だ。ネットを見ると、TO-DOシートの作り方から使用方法などまでたくさんあるが、その始まりは葉隠にあったわけだ。まさに知識や行動の宝庫だ
この「葉隠入門」の中で三島由紀夫は、下記のように関連する解説も述べている。ちょっと長いが、引用してみよう。
わたし自身はあくる日の予定を前の晩にこまかくチェックして、それに必要な書類、伝言、あるいはかけるべき電話などを、前の晩に書きぬいて、あくる日にはいっさい心をわずらわせぬように、スムーズにとり落としなく仕事が進むように気をつけている。これはわたしが「葉隠」から得た、はなはだ実際的な教訓の一つである。
今年は三島由紀夫没後50周年ということで、東大で全共闘との対決を描いた映画や関連する書籍などが出回っている。記録映画や過去の番組映像でしかみたことのない三島由紀夫が、TO-DOシートの原点のような使い方をしていたとはビックリしてしまう。
TO-DOシートの使い方は、いまやネットで検索すれば、なかにはさまざまなアイデアが詰め込まれているものもある。こうなってくると、複雑すぎて使いやすいのか使いにくいのかちょっと考えてしまう。〝シンプル・イズ・ベスト〟で、単純なそして簡単なスタイルがいいと思っているのだが、超整理手帳のリフィルなどではなく、小さなノートタイプにしてみようか。
このBlogでも以前紹介した三島由紀夫の避暑地での姿を描いた「三島由紀夫の来た夏」。そこにドナルド・キーンがこんなことを述べていた。「吉田松陰も何十年も理解されず嗤われたのです。ミシマの行為は五十年、いえ百年かかって理解されてゆくでしょう。それでいいのです」。まさに、このセリフのとおりなのだった。
まさか葉隠に、今日のTO-DOシートのことが書いてあるとは思わなかった。歴史をさかのぼれば、もっと前にTO-DOシートの原点的記述があるかもしれない。