業務日誌#35

「しのご」が日々の業務で気が付いたことを、脈絡なく気ままに書き連ねています。

ノートは書くことばかりではなく、読むことも重要だ

寺田寅彦」を知っているだろうか。物理学者にして随筆家、俳人であり、夏目漱石とも交流のあった人で、詳しい人物概要はWikipediaに掲載されている。さてこの寺田寅彦の随筆は青空文庫にも掲載されていて、先日たまたま「どんぐり」を読んでいた。

その出だしの2行目に「袂からおみやげの金鍔と焼き栗を出して余のノートを読んでいる机のすみへそっとのせて、」という一文があるある。よく「ノートは書くばかりではなく、あとから読んでみることも重要」ということが言われているけど、すでに寺田寅彦はこの『ノートを読む』ことを実行していたのだ。文末に「明治38年4月、ホトトギス」とあるから、その以前からノートの再読を実行していたことになる。

かなりむかしからアイデアマラソンを実行しているが、関連する著書の中で「過去のノートを読み直してみるとバージョンアップ案、世の中の実情に合った案などなどが出てくるものだ」と書いてある。なるほどと思い、自分もこれまでのノートを読み直している。

考えてみると、レオナルド・ダ・ビンチ、エジソンなども膨大なノートを書いている。書いていたことはよく知られているが、読み直していたという記述はほとんど見かけないけど、業績からみてたぶん読み直しもやっていたのだろう。

少々むかしの自分のノートにさかぼぼって読んでみる。「1分で大切なことを伝える技術」(斎藤孝)には「(過去のノートの)キーワードは青で囲み、その中で『これだけは~』という言葉を赤で囲む」なんてテクニックが紹介されていたようで、ノートにも抜き書きしていた。図書館から借りてきた本だったからノートにメモしていたわけで、自分でもなるほどと思ったのだろう。

さらにさかのぼって、むかしの読書ノートも見てみると面白い発見があった。「入門 手帳の技術」(長崎快宏)は1995年11月に出版されたものだが、いまは読書ノートが残っているだけ。そこには「メモの取り方は1件につき1枚が原則」「メモを長続きさせるコツは、なるべくシステム単純化することにある」「いくつかのグループをつくり出す」「たらない部分のアイデアを書き加えていく」などなど、読書メモをみていてちょっとびっくりした。これは現在、自分が実行している「超メモ術ノート」の前身ともいえるような内容ではないか。

とまぁ、寺田寅彦の随筆「ドングリ」の一文がきっかけで、ここまで考えや行動がひろがったわけだ。

自分のノートはすべてA5で80~100枚の厚手のタイプを使っており(枚数が異なるのはメーカーが違うから)、用途はアイデアマラソン用と超メモ術用のふたつ。アイデアマラソンノートは26冊目、超メモ術ノートは7冊目、もはや使っていない過去の読書用やメモ用(いろいろとメモスタイルなどの実験もしていた)などが6冊。アイデアマラソン樋口健夫氏のサイトをみると、エッセイに過去のノートを読み直したことなども書いてあったので、1年前以前のノートはすべて読み直した。超メモ術ノートもすべて読み直した。

ノートの読み直しも、自分なりにちゃんとやっているではないか……。しかし、過去の読書ノートだけは再読することもなく、本棚のスペースを単に埋まっているだけだった。寺田寅彦にならって読み直すと、思わぬ発見があるものだなと思う。

「いまはデジタル時代だ。手書きのノートなんか使っておれん」という人に、「思考・発想にパソコンを使うな」(増田剛己)に書かれているひとことを紹介しておこう。「大量の情報収集・整理にはデジタル、思考・発想などの頭脳労働には手書きノートを使えば、最大限にあなたの能力が引き出せるはずだ」。