業務日誌#35

「しのご」が日々の業務で気が付いたことを、脈絡なく気ままに書き連ねています。

シャーロック・ホームズの傑作選

このところシャーロック・ホームズ物語を再読し、加えてホームズにまつわるさまざまな本も読んでみようと思った。どんなテーマがよいのか予測がつかないので、まずは図書館から「シャーロック・ホームズ秘密の一端」を借りて読んでみたのだった。

そうしたら、ここにコナン・ドイルが1927年に選んだベスト12が掲載されていた。ドイル自身が「独創性のあるプロットで選んだ」と述べているそうだが、このようなベスト集を作っているとは思わなかった。ちょっと紹介してみよう(新潮文庫版)。

  1. まだらの紐
  2. 赤髪組合
  3. 踊る人形
  4. 最後の事件
  5. ボヘミアの醜聞
  6. 空家の冒険
  7. オレンジの種五つ
  8. 第二の汚点
  9. 悪魔の足
  10. プライオリ学校
  11. マスクレーブ家の儀式
  12. ライゲートの大地主

ふたたび読んでみようと思うなら、これらタイトルの事件記録(笑)を読んでみようではないか。また同書によれば、同じくシャーロック・ホームズ研究団体「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」が1959年に実施した人気投票によると「上位二作品は同じで、ほか四作品が重なっていた」と簡単に紹介されていた。

しかしながら、ちょっと待てよと思った。これはコナン・ドイル自身が選んだものであり、また「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」もニューヨークに本部があり、1934年に創設されたものらしい。1959年のランキングでは、いまの日本人の読者感覚と少し違うのではないかという気がした。

こういうときは、老舗である日本シャーロック・ホームズ・クラブの人気ランキングをみてみる。そこには、まったく異なる評価が下されている。

第一回人気投票 1979年実施
  1位 バスカヴィル家の犬
  2位 赤毛組合
  3位 まだらの紐
  4位 緋色の研究
  5位 ボヘミアの醜聞
  6位 踊る人形
  7位 唇の捩れた男
  8位 瀕死の探偵
  9位 四つのサイン
 10位 恐怖の谷


第二回人気投票 1992年実施
  1位 バスカヴィル家の犬
  2位 赤毛組合
  3位 まだらの紐
  4位 青いガーネット
  5位 ボヘミアの醜聞
  6位 四つのサイン
  7位 踊る人形
  8位 緋色の研究
  9位 空き家の冒険
 10位 六つのナポレオン


第三回人気投票 2012年実施
  1位 バスカヴィル家の犬
  2位 赤毛組合
  3位 ボヘミアの醜聞
  4位 青いガーネット
  5位 まだらの紐
  6位 緋色の研究
  7位 恐怖の谷
  8位 四つのサイン
  9位 踊る人形
 10位 最後の事件

このランキングをみれば「バスカヴィル家の犬」「緋色の研究」をはじめとする長編が入っている。ドイルのいう「独創性のあるプロットで選んだ」というよりも、日本の読者として選んだランキングだという気がする。

まぁ、どんな事件記録を読もうといいではないか。実はこの本を読む少し前に「シャーロック・ホームズ大人の楽しみ方」を読んだのだった。さまざまなホームズ研究の概要が書かれており、もはや好きというだけの読者は登場できないほどまでに研究が進んでいる。事件記録を楽しむしかないような気もする。